ある日、娘様から一本のお問い合わせをいただきました。
「母が、もう一度キリンを見たいと言っているんです。」
お母様は80代。
病気の影響で車椅子生活となり、外出の機会はめっきり減っていました。
さらに、余命が限られていることをご家族も受け止めながら、「今、母が本当にやりたいことを叶えてあげたい」というお気持ちでご相談くださいました。
お話を伺う中で、お母様がずっと口にされていたのが、
「もう一度、キリンが見たい。」
という願いでした。
「できない理由」ではなく、「できる方法」を考える
しかし、その日は真夏。
長時間、屋外の動物園を歩くことは、お客様の体力を考えると大きな負担になります。
そこで私たちがご提案したのが、姫路セントラルパークのドライブサファリでした。
車に乗ったまま園内を回れるため、暑さを避けながら安心して動物たちを見ることができます。
「歩けないから無理。」
ではなく、
「どうしたら安全に実現できるだろう。」
そう考えることも、看護の大切な役割だと私たちは考えています。
目の前に現れた、大好きなキリン
サファリを進んでいくと、ゆっくりと歩くキリンの姿が見えてきました。
お客様はしばらく言葉もなく見つめ、
「やっぱり、キリンはきれいやね。」
そう微笑まれました。
その穏やかな表情からは、動物を見ているだけではなく、ご家族との思い出や、これまで歩んできた人生を静かに振り返っておられるように感じました。
「キリンが見たい」の本当の意味
お話を伺っていると、その言葉の背景には、もっと深い想いがありました。
若い頃、お子さんたちを連れて何度も動物園へ出かけていたそうです。
「子どもたちが喜んでいたなぁ。」
「キリンを見るたびに、みんなではしゃいでいた。」
キリンを見たいという願いは、ただ動物を見たいということではありません。
子どもたちと過ごした、かけがえのない時間をもう一度心の中で味わいたい。
そんな人生の大切な思い出につながる願いだったのです。
私たちが支えたいのは「人生」
保険外看護では、医療的なケアを提供することはもちろん大切です。
しかし、それ以上に大切にしたいのは、
その人らしい人生を支えること。
「もう一度、あの景色を見たい。」
「家族との思い出の場所へ行きたい。」
「お墓参りに行きたい。」
「孫と一緒に出かけたい。」
病気や障害があるからといって、そうした願いを諦める必要はありません。
看護師だからこそ、体調やリスクを考えながら、安全に実現する方法を一緒に考えることができます。
人生の最終章だからこそ、その方らしく笑い、思い出を重ねる時間を大切にしてほしい。
私たちは、これからもそんな時間に寄り添っていきたいと思っています。

