
緩和ケア認定看護師コハルの「すこしでも楽になりますように」をご覧いただきありがとうございます。
今回は「辛い便秘を和らげるためにできること」をテーマにお伝えしていきたいと思います。
便秘は多くの人が悩む一般的な健康問題ですが、特に高齢者や寝たきりの方、抗がん剤治療中の方にとっては深刻な課題となることがあります。
便が気持ちよくすっきり出ると、幸せな気持ちになりますよね。
その理由は何なのか
便秘が身体と心に及ぼす影響についても深く掘り下げていきたいと思います。
便が出ないとどうなる?
腸は脳とつながっている?

近年の研究で、腸と脳の密接な関係が明らかになってきました。
これを「腸脳相関」または「脳腸相関」と呼びます。
脳の思考や感情が腸の機能に影響を及ぼす一方で、腸の状態が脳の働きにも影響を与える相互作用のことです。
例えば、ストレスを感じると腹痛や便秘、下痢などの症状が現れることがあります。
そして、腸内環境の悪化が不安やうつ状態などの精神的な問題を引き起こす可能性もあります。
これは腸と脳が体内の環境をコントロールする「迷走神経」という神経でつながっているためです。
よくある例をお伝えします。
図書館に行くとトイレに行きたくなる。
楽しみなことを考えると催す。
そんな体験はありませんか?
私たちコハルが目指す「楽しみ」と「じんわり幸せ」はまさに腸脳相関によい影響を与えてくれるのです。
身体へ与える影響
腹痛

便がたまると、「しぶり腹」といって、排出されない便で蓋をされた腸が空回りする現象が起こります。
ちょうど、ウィンナーを絞る口が詰まっているときのように、腸は膨らみ、蠕動が逆流する痛みが生じます。
これはとても辛い痛みです。
また、硬い便がつまることによる直腸の痛みなども引き起こされます。
痔

これも辛い症状のひとつです。
硬い便を出すときに切れたり、長時間便座に座っていることで、いぼ痔になったりします。
その他
他にも便が長時間腸に留まることによる、大腸憩室炎や、直腸脱
肌荒れや頭痛、だるさにもつながります。
なぜ便秘になるの?
では便秘の原因についてお伝えしていきたいと思います。
食事のかたより
食事の量や質は便秘に大きな影響を与えます。
量が多すぎると、腸の動きの妨げになり、少なすぎるとカサが増えずに便秘の原因になります。
また、一般的に便秘にいいとされている食物繊維は、便のカサを増やしてくれる一方、硬くなりお年寄りや寝たきりの方にとっては出すのが難しいことがあります。
便秘だからといって、ゴボウばかり食べていては、排出できずにガスばかり溜まってしまう例もあります。
水分摂取不足
水分不足により便の水分含有量が減少し、硬い便になります。
健康な便の水分を含む量は70~80%ですが、60%程度までになるとカチカチ便となり、出しにくくなります。
カチカチ便は重さと滑らかさが不足し、腸内でスムーズに移動できなくなります。
寝ころんだ状態で、お腹を触ったとき、硬い便が触れるならカチカチ便が居座っているということです。
前述した食物繊維をいくら摂取しても、水分をしっかり摂っていないと、便が硬くなり、便秘が悪化する可能性があります。
運動不足
運動すると、腹筋の低下を防ぐだけではなく、自律神経が整い、腸の動きがよくなります。
手術の後、早めに歩かなければならないのは、全身麻酔でストップした腸の動きを回復させることも理由の一つなのです。
運動できない方は、お腹を温めることで、歩くのと同じような効果を得ることもできます。
薬の副作用
一部の血圧の薬、咳止め、医療用麻薬、パーキンソン薬、抗がん剤の中には便秘を引き起こす種類が多くあります。
腸蠕動を低下させる副作用があることを踏まえたうえで、日々の生活の中に蠕動をアップさせる方法を取り入れていく必要があります。
加齢による腸の機能低下
高齢になると胃腸の消化吸収、蠕動機能や筋力が低下します。
それらを踏まえたうえで、生活や薬剤コントロールを行っていく必要があります。
高カルシウム血症
血液の中のカルシウムの値が薬の影響や骨転移などの病気の影響で高くなると、便秘に傾きます。
単にカルシウムの多い食品をとりすぎるとなるということではありませんのでご安心ください
消化管閉塞
大腸がんや直腸瘤などの病態があると便秘を引き起こします。
便が出ないからといって、過度に心配しすぎることはありません。心配な方は医師に相談してくださいね。
宿便
カチカチ便が直腸にたまってしまい、そこからあふれ出すように水様便が出る溢流性下痢の原因になることがあります。
この場合、一見便が出ているので、便秘と捉えられず、放置してしまいがちになりますが、どんどん巨大化してさらに宿便化してしまう可能性があるため、注意が必要です。
基本的な便秘対策
バランスの良い食事
食物繊維を多く含む野菜や果物、全粒穀物を積極的に摂取しましょう。
また、発酵食品(ヨーグルトなど)も腸内環境を整えるのに効果的です。
食事と食事の間はあけて、空腹でお腹のなる時間をつくることも効果的です。
十分な水分摂取
1日1.5〜2リットルの水分摂取を心がけましょう。
水でなければならないということはありません。摂りやすいお茶やスープ、お味噌汁、ジュースなどでも大丈夫です。
その場合は、血糖値や血圧に支障がでないようにほどよく摂取してくださいね。
適度な運動
可能な範囲で散歩やストレッチなどの軽い運動を行いましょう。ここで大切なのは、気持ちよく、無理せずということです。
爽快感を感じることで自律神経が整います。ぜひ楽しみながらとりくんでみてください。
便を出しやすい環境調整

ちょうど「考える人」の姿勢が腹圧をかけやすい姿勢になります。
和式便所の方がいきみやすかったりしますよね。しっかり地に足をつけることもポイントです。
また、プライバシーが保たれている環境は排便を出すのに必要なことです。
訪問看護でできるケア
- 排便状況の確認と記録
- 腹部マッサージ
- トイレ誘導や排便姿勢のアドバイス
- 食事や水分摂取の管理とアドバイス
- 主治医との連携による薬の調整
まとめ
いかがでしたでしょうか?
便秘が解消すると気持ちまで明るくなります。
コハルは、緩和ケアの現場で便秘に苦しむ人をたくさんみてまいりました。
こちらに書いた内容の他にも、その方にあった便秘解消の方法の工夫をたくさん持ち合わせております。
ご相談は無料で行っております。
便秘で苦しむ方がすこしでも心地よく過ごせるようお祈りしております。